窓ガラスの台風対策・地震に備える窓ガラスの防災対策

公開日:2023年10月23日

日本において7月から9月は台風の接近・上陸の多い時期で、強風によって飛ばされた飛来物が窓ガラスに衝突することで割れてしまうなどの被害が発生しやすく、様々な防災対策が求められています。
さらに近年は、地震(震度1以上の有感地震)も頻発化してきており、より「常日頃からの防災安全」への意識が高まっています。

今年、2023年は、関東大震災から100年の節目の年です。

この記事では、被害の出やすい窓ガラスについて「正しい防災知識」をまとめています。
これを機に建物に必要な常時防災安全性について考え、いまいちど防災対策を見直すことで、被害を最小限にとどめるようにしましょう。

台風の上陸数と大型化について

わたしたちは、毎年のようにニュースで大型台風の襲来を耳にするようになりました。
近年、台風の上陸・接近回数は増加傾向にあり、大型化した台風による被害も甚大化しています。
以下は、台風の日本国内における年間上陸回数と接近回数を気象庁の統計資料を元にグラフ化したものです。

グラフ:年間上陸回数と接近回数

気象庁の統計によると、台風の発生数はここ数年、平年より高水準で推移しており、上陸数も平年を上回っていることが分かります。
上陸回数自体は2020年頃には落ち着いてきたように見えますが、接近回数は依然多いままとなっています。
上陸しなくても、大型台風が非常に強い勢力を保って接近し、大雨や暴風をもたらすことはけっして珍しいことではありません。
今後、地球温暖化による海面の温度上昇に伴い、台風はより激甚化する傾向にあります。
台風が多発する日本で生活するには、その被害と対策について真剣に考える必要があるのです。

台風による窓ガラスへの被害

住宅やビルにおいて、台風被害の出やすい場所の一つが「窓ガラス」です。
例えば、シェアリングテクノロジー株式会社が2018年に行った建物における台風被害箇所調査によると、集合住宅の場合は8割以上がガラスに集中、戸建でも2割がガラスに被害が及んでいます。
台風時に窓が割れる原因は、下記の2点です。

  • 暴風・強風で割れる
  • 飛来物で割れる

台風被害が集中しやすい窓ガラスには、原因にあわせた対策を確実に行うことが重要です。
ここではまず、それぞれの原因を詳しく解説していきます。

暴風・強風で割れる

窓ガラスは、種類・ガラスの厚み・大きさで許容できる風圧が異なり、その強度を上回る風圧を受けてしまった場合は割れてしまいます。
そのため、窓ガラス選定時には「許容風圧力」を考慮しなければなりません。
一般的に住宅で使用されているガラスごとの許容荷重は以下のとおりです。

【ガラスの許容風圧力】

ガラスの種類 構成・厚み 許容風圧力(N/㎡)
一枚ガラス
(フロート板ガラス)
3mm 1,575
複層ガラス
(ペアガラス)
3mm+空気層+3㎜ 2,362
合わせガラス 3mm+特殊フィルム+3㎜ 3,375

続いて、ガラスが台風にどのくらい耐えられるかを考えるため、風速と風圧の表で見ていきます。

【風速と風圧、台風の関係(参考)】

風速(m/s) 風圧(N/㎡) 備考
(風速における台風の名称※1
50 1,531 非常に強い台風
(最大風速44-53m/s以上)
60 2,205 猛烈な台風
(最大風速54m/s以上)
  • ※1 気象庁で定められた台風規模の名称

以上のことから、ガラスは許容風圧力が高く、非常に強い台風にも耐えうることがわかります。
実は台風時に窓ガラスが割れるのは、風圧のみが原因であることは稀であり、飛来物が原因であることがほとんどなのです。

飛来物で割れる

台風時には、暴風で飛ばされたものが窓を直撃して窓ガラスが割れ、その破片でケガをすることがあるため大変危険です。
また、窓ガラスが割れて開口が生じることで、そこから強風が入り込み、室内の家具などにも被害が生じます。
また、被害が大きい場合には、入り込んだ強風により屋根が吹き飛ばされてしまうといった甚大な被害に繋がる恐れもあります。

しかし、窓ガラスに飛来物がとんでくる可能性は、大型台風のとてつもない暴風雨の時だけとは限りません。
看板や屋根材が吹き飛んでくる可能性があるのは、平均風速20m(瞬間風速30m/s)以上。さらに平均風速が35m/s (瞬間風速50m/s)以上の風で、外装材でさえ飛んできてしまう可能性があります。

暴風で窓ガラスにどんなものが直撃するかは、立地条件や風速によって異なるため、予想することはできません。
窓ガラスには、台風時には飛来物が飛んでくることを前提として、割れても飛散しにくい「防災安全合わせガラス」をご採用いただくと安心です。

割れたガラスの危険性

台風時は、室内にいれば安心というわけではありません。
強風や飛来物で割れたガラスは、怪我や死亡事故につながります。
2018年の台風21号では、スレート材が窓を突き破り、その破片があたるなどしてマンション8階に住む70代の女性が命を落としました。
最近でいえば、2023年8月に強風で温水プールの窓ガラスが割れ、男子児童が怪我をしています。
割れたガラスによる事故は、誰にでも起こり得るからこそ、しっかりと対策をすることが重要です。

台風接近時の防災対策について

台風時の対策として、主に5つの方法があります。

  • 開口部の開閉は控えて施錠
  • 窓ガラス周囲の物品の片付け
  • 養生テープや飛散防止フィルムを用いた対策
  • 防災安全性が高い合わせガラスを導入
  • 雨戸を導入

ここでは、それぞれの詳細と注意点などをまとめています。

窓ガラス周囲の物品の片付け

台風の襲来に備え、窓ガラス周辺のものや庭などにある植木鉢や物干竿など、強風で飛んでいきそうなものは屋内にしまっておくことが重要です。
事前に片付けることは、ご自宅の被害を防ぐだけではなく、隣家への被害を防ぐためのマナーとして大切なことといえるでしょう。

養生テープや飛散防止フィルムを用いた対策

台風時には、養生テープや飛散防止フィルムを貼った窓をよく見かけます。
しかし、養生テープでの対策は安価で簡単にできるので、2019年や2020年の記録的な大型台風の接近時の際は、ホームセンターなどの品薄が相次ぎました。

養生テープや飛散防止フィルムは、誰にでもできる対策で人気がありますが、実は最低限の対策であり、けっして万全な方法ではありません。
養生テープを貼っても、貼られていない部分に飛来物があたってしまうと、窓ガラスは容易に割れてしまいます。
飛散防止フィルムは、フィルムの選び方や窓の種類によっては温度差や膨張率の差でガラスにひびが入る「熱割れ現象」を起こしてしまう可能性があります。

防災安全性が高い合わせガラスを導入する

台風対策として非常に有効な対策が「防災安全合わせガラス」の導入です。
防災安全合わせガラスは、2枚のガラスの間に厚さ60mil(約1.5ミリ)の柔軟で強靭な特殊フィルムを挟んだ構造のガラスです。
屋根瓦の破片相当の飛来物が衝突してもガラスを突き抜けることはなく、衝突から人や家具を守ります。

また、破損した場合も破片がほとんど飛び散らず、ガラスが窓枠から抜け落ちにくいため、被災後も継続して生活を維持することができます。

飛散防止フィルムのように、経年劣化などによる交換も不要なため、ガラスが破損しない限りはその効果はずっと期待できます。
また、防災安全合わせガラスは高い性能をもつにもかかわらず、見た目は普通のガラスと変わらないのも人気の理由です。

可能であれば雨戸を導入する

雨戸を設置すれば、強風による窓ガラス飛散を防ぐことができます。
雨戸は台風対策としてとても効果的な方法ですが、設置条件があり、下記のような場合は設置することはできません。

  • 建物の許容重量オーバー
  • 強風で飛ばされやすい高層階

雨戸は建物の外観の印象も左右します。
すっきりとしたデザインにこだわりたい方は、シャッターや防災安全合わせガラスを選ぶとよいでしょう。

接近時は開口部の開閉は控えロックしておく

台風時には、事前に開口部をロックし、開閉を控えるようにしましょう。
窓や網戸のはずれ止めについても、セットしてあるかを確認するようにしてください。

地震による窓ガラスへの被害

窓ガラスは、台風だけではなく地震時にも特に破損しやすい場所といえます。
原因は以下の二つです。

  • 揺れにより窓枠が歪み、その変形にガラスが追随できずに割れる
  • 家具などの衝突

一般的なガラスの設計基準は、多少の揺れを許容できる設計になっております。
また、家具は固定をするなどの対策をとっている方も多いことでしょう。
しかし、想定を上回る大地震の揺れは、それでもなお窓ガラスを破損してしまう恐れがあります。
割れて飛び散った窓ガラスの破片は鋭利で大変危険です。 割れたガラスで額や足を怪我すると、避難できずに命に係わる事態にもなりかねません。
地震時においても、割れても破片が飛び散らないように、窓ガラスへの防災対策を重要視する必要があるのです。

常時防災安全性とは

近年は「常時防災安全性」に注目が集まっています。
自然災害の中でも特に地震は突然起こる災害で、台風のようにいつ起こるかを予想することができないため、その都度事前に対策することは不可能です。
そのため、防災対策は災害時だけでなく、日常に取り入れることが重要です。

窓ガラスに求められる常時防災安全性

窓ガラスは地震時に被害がでやすい箇所で、しっかりと適切な対策をうつべきですが、残念ながら割れないガラスはありません。
ケガなどの被害を減らすために重要なことは、ガラスが割れないことではなく、割れた破片が散乱しないようにガラスに安全性をプラスすることです。

防災対策に最適な窓ガラス

常時防災安全性を確保する窓ガラスとしておすすめなのが、割れてもガラスが飛散しない「防災安全合わせガラス」です。
防災安全合わせガラスは2枚のガラスの間に厚さ60mil(約1.5ミリ)以上の特殊フィルムを挟み込むことで、以下の4つの防災性を発揮します。

  1. 耐貫通性
  2. ガラスの飛散防止
  3. ガラスが窓枠から抜け落ちにくい
  4. 常時防災安全性

AGCでは、防災安全合わせガラスとして

などのブランドがあります。

防災安全合わせガラスの防犯性能

防災安全合わせガラス特殊フィルムの厚さは60mil(約1.5ミリ)であり、一般的な防犯ガラスの2倍の厚さのフィルムを使用しているため、防災性能に加え、より高い防犯性能を有します。
また、その防犯性能の高さから、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」で定められた試験に合格した商品として、CPマークの表示が認められています。

泥棒の侵入を抑制

ガラスに防犯対策を行うことは極めて効果的です。
2022年に警視庁が発表した住宅の侵入手口の傾向によれば、空き巣の侵入口は約69.6%が「窓」とされています。

「こじ破り」「打ち破り」「焼き破り」をクリアする

防犯対策に有効なガラスは、侵入手口となる「こじ破り」「打ち破り」「焼き破り」に対し、一定の条件をクリアしていることが重要です。
窓ガラスにおける「こじ破り」「打ち破り」「焼き破り」への効果は、次の2つの基準から判断できます。

  • 防犯性能の高い建物部品目録(CP認定品)
  • ガラスの防犯性能に関する板硝子協会基準

まとめ

この記事では

  • 台風や地震の被害
  • 常時安全性の必要性
  • 窓ガラスにおける正しい防災対策
  • 防災安全合わせガラスの防犯性能

について解説しました。

台風や地震などの自然災害は、毎年のようにわたしたちの生活を脅かします。
災害に備えて、日ごろから防災対策を行う「常時防災安全性」を重要視していかなければなりません。
災害などによる被害を最小限にとどめてくれる防災安全合わせガラスは、わたしたちの生活の強い味方となる優れた製品です。
窓に防災安全合わせガラスを導入することで、大きな「安心」と「安全」を実感することができるでしょう。