エコガラスとは?性能やメリットを詳しく解説

公開日:2023年6月1日

近年、サステナブルな社会の実現を目指すための、カーボンニュートラルへの取り組みが注目を集める中、環境にやさしい「エコガラス」への注目度も高まっています。

この記事では、エコガラスの概要や仕組み、効果、メリットなどについて詳しく掘り下げてご紹介します。

エコガラスとは

エコガラスは、一般社団法人 板硝子協会の会員であるAGC(株)、日本板硝子(株)、セントラル硝子プロダクツ(株)の3社が製造するLow-E複層ガラスの共通呼称です。 「エコガラス」という名称がつけられていますが、具体的にどのような点がエコなのでしょうか。

他のガラス製品との比較をしながら、エコガラスの概要を解説します。

Low-E複層ガラスとは?

Low-Eは、「Low Emissivity(低放射)」という英単語の略称です。
ガラスの断熱性能を高めるために、2枚のガラスの間に乾燥気体(空気、アルゴン等)を封入し、断熱層を設けた複層ガラスです。
また、Low-E膜をコーティングしたLow-Eガラスを用いて、放射による熱移動を抑え、さらに断熱性能を高めたのがLow-E複層ガラスです。

一般的なガラスとの違い

エアコンや暖房器具、冷房器具を使っていても、なかなか室内が適温にならないという悩みを抱える方も多いでしょう。
実は、窓は適切な温度の調整を妨げる原因のひとつです。

窓ガラスによっては、夏場に外の日射熱を室内に取り込み、反対に冬場に室内の熱を外へ逃がしてしまうことがあります。
特に1枚ガラスを用いた一般的な窓ガラスは外部環境の影響をより受けやすく、遮熱や断熱に対する性能は高くありません。

エコガラスは優れた遮熱性能と断熱性能で窓ガラスからの熱の出入りを防ぎ、暑い夏も寒い冬も、部屋を快適に保ってくれます。

ペアガラスとの違い

ペアガラス(複層ガラス)と呼ばれる製品もあります。
2枚のガラスで中空層を作ったガラスで、間にはさまれた空気によって、1枚ガラスよりも断熱性能を向上させています。

エコガラスはペアガラスの内側にLow-E膜をコーティングすることで、断熱性能、遮熱性能を更に高めた商品です。
その製品がエコガラスかどうかの判断は、製品本体の「エコガラス」「Low-E」という刻印の有無により確認できます。

エコガラスの構造と種類

一見普通の窓ガラスと何も変わらないように見えるかもしれませんが、実はエコガラスにはその性能を維持するための仕組みがあります。

エコガラス 構造

エコガラスは複層ガラスで構成されており、ガラス同士の内側に「Low-E膜」という金属膜をコーティングしている点が大きな特長です。

ガラスとガラスの間には、乾燥状態を保つために吸湿剤を充填したスペーサーを四周に設け、封着しています。

そのため、1枚ガラス用のサッシでははめ込むことができませんが、別途アタッチメントを設置することで取り付けが可能となります。

エコガラス 種類

エコガラスには、「日射取得型」と「日射遮蔽型」の2種類があります。
この2つは日射熱取得率の値で区分されています。

日射取得型は室内に日射熱が届くため、熱をカットする効果は日射遮蔽型と比較すると穏やかです。

そして暖房などの室内の熱を留めておく効果は高いため、外に熱が逃げていかない、つまり断熱効果が高くなります。

一方、日射遮蔽型は高い断熱性だけでなく、外側にあるLow-Eガラスが日射熱を反射し、室内に到達する熱量を軽減させる効果の高さが特長です。

窓から取り込まれる日射量や部屋の方角によって、適切なタイプは異なります。

エコガラスの特長と効果

続いて、エコガラスによって具体的にどのような効果を実感できるのかをまとめました。

節電・省エネ

エコガラスの特長は中空層とLow-E膜の働きにより、室外の環境の影響を受けづらいことです。

そのため、冷暖房器具が調整する部屋の涼しさや暖かさを効率的にキープし、節電や省エネ対策に貢献します。
実際に、室内の熱が流出・流入する要因は窓の影響が大きく、実に50~70%程度を占めるというデータもあります。

また、エコガラスを導入することで部屋の全体的な温度を保つだけではなく、窓辺や足元などで発生しやすい温度差によるムラも解消されるでしょう。

窓の断熱・遮熱

エコガラスはすぐれた断熱性能と遮熱性能で、ガラスからの熱の出入りを防いで、暑い夏も、寒い冬もお部屋を快適に保ってくれます。

冷暖房の効率が良いので、節電効果もある、その名のとおり「エコ」なガラスです。節電効果があるということは、冷暖房費削減にも貢献します。

また、Low-E膜は明るさを保つ可視光線は透過するという性質を持っているため、サングラスのように視認性を犠牲にする心配がなく、明るさが取り込まれなくなるということもありません。

紫外線カット

遮熱効果によって日射量を軽減すると同時に、紫外線を大幅にカットする効果も得られます。

室内にいると紫外線を浴びていることを実感しづらいかもしれません。
実は壁紙などの色褪せ・日焼けの原因は、紫外線の影響が大きいです。

Low-E膜は紫外線の侵入を抑制する効果も含まれています。

結露防止

結露は外気温が低く、室内で暖かく湿った空気が含まれている環境でよく見られます。

エコガラスは冷たい外気を室内に伝えにくくなっているため、結露の防止にも最適です。

結露が発生すると、カーテンなどの周辺物が濡れてしまう、掃除が大変になるといったデメリットだけではなく、長期間放置したままでいることでカビやダニの温床になることや、壁や床にシミができることもあります。

エコガラスのその他のメリット

エコガラスの導入には製品そのものの遮熱・断熱効果だけでなく、その他の副次的に得られるメリットもあります。

ここからはエコガラスの導入による効果をご紹介します。

防犯性が高い商品を選べる

エコガラスは複層ガラスの構造を採用しています。

Low-Eガラスではないもう片方の板ガラスを防犯ガラスにすることで、住居の防犯性を高めることが可能です。

防犯ガラスは合わせガラスの一種で、その名の通り2枚のガラスの間に特殊なフィルムをはさみ込んだ構造になっています。

叩き割ろうとするとヒビは入りますが、貫通するまで時間がかかるため、空き巣などの対策に効果的です。

また、耐貫通性に優れ、破片が飛散しにくい特長があり、防犯の観点のみならず、地震・台風などの災害における安全性を高めるメリットもあるでしょう。

エコガラスのリフォームと補助金

近年、世界的に関心が高い温室効果ガスの削減を目指し、日本政府も省エネ対策の効果が高いリフォームを推進すべく、その費用を助成する支援事業が始まっています。

例えば、国土交通省・環境省・経済産業省が共同で創設した「住宅省エネ2023キャンペーン」の「先進的窓リノベ事業」や「子どもエコすまい支援事業」など政府や自治体が推進するキャンペーンや支援事業があるため、管轄の省庁や自治体のウェブサイトでご確認ください。

近年は政府主体の支援事業だけでなく、自治体単位の省エネに関する補助金も増えました。

例えば、東京都の「既存住宅における省エネ改修促進事業(高断熱窓・ドア)」や、横浜市の「省エネ住宅補助制度」などが該当します。

ただし、申請者の調整や予算などの関係で、制度があっても受付期間が限定的というケースもあります。 補助金制度の確認は、住居がある自治体のWebサイトにアクセスするのがもっとも確実でしょう。

または、リフォームのお見積もりの段階から、あらかじめ施工業者に補助金の助成を検討している旨を相談しておくと安心です。

まとめ

新設住戸におけるLow-Eガラスの普及率は年々広がりを見せています。

単純に部屋の寒さや暑さが軽減されるだけでなく、電気代の削減や環境保全への貢献にもつながるなど、エコガラスは長期的な社会のニーズにあった製品です。