導入事例

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快適な室内

1.熱の移動と断熱

熱・温度・湿度
         

どのように熱が伝わっているのかを理解することは、断熱を考える場合の参考になります。
断熱とは熱の移動を抑えることです。

         

まず、熱の移動方法を整理しておきます。熱が伝わる伝わり方(移動)は「伝導」「放射」「対流」の3種類です。どの方法で熱が伝わっているのかを理解することは、断熱を考える場合に参考になります。
そして、熱エネルギーは高いほうから低いほうへ移動する、すなわち高温部から低温部へ移動すると考えるとわかりやすくなります。

ソリッドな物質の内部や表面を熱が伝わることが「伝導」です。

【画像】(図1)伝導

(図1)伝導

物質の内部や表面を熱が伝わる伝導

伝導は形のある物質の内部や表面を熱が伝わることで(図1)、接触している複数の材料間の熱の移動もあります。各物質の熱伝導率の値が熱の移動のしやすさ(移動の早さ)を表します。数値が大きいほど熱が移動しやすい物質です(表1)。

例えば木材、ガラス、アルミニウムで、5㎜角、長さ30㎝の棒状のものがあるとします。片側を持ってもう片方をバーナーなどの炎にあてると、木材は燃え始めてしまいますが熱伝導率は低く、しばらくは持っていられます。一方ガラスやアルミニウムは時間が経つと炎の熱で溶け始めます。アルミニウムはすぐに持っていられないほど熱くなります。しかしガラスは片側が溶け始めても持っていられるのです。ガラスを溶かしてトンボ玉を作るバーナーワークという手法をご存知の方は、片側が溶けているガラス棒を手で持って熱くないのかと不思議に思われたのではないでしょうか。ガラスは金属に比べ熱が移動しにくい材料なのです。

「放射」による熱移動は、なにもない真空中でも伝わりますが、遮ることができます。

【画像】(図2)放射

(図2)放射

太陽の熱は放射で地球に到達しています。

良く言われるのが太陽と地球の関係。すなわち太陽の熱が地球に到達するのが放射による熱伝達です(図2)。太陽の表面温度は約6000℃で1憶5千万km離れている地球に生命を維持する温度を供給しています。放射は異なる温度を持つ2つのモノの間(この場合は太陽と地球)を、その間が真空であっても空気があっても熱エネルギーが移動する手段です。ただし雲のような不透明なモノが間に入ると、放射による熱移動は大きくブロックされます。
太陽は温度として極端な例ですが身近にもこの現象は普通にあります。Low-Eペアガラスの遮熱機能は、2枚のガラス間の放射現象をブロックすることにより機能しています。

液体や気体の一部分の温度が上がると、全体が動いて均一温度になっていく「対流」

【画像】(図3)対流

(図3)対流

液体や気体の中を熱が伝わる対流

容器の中の液体や気体は、その一部分に温度変化があると移動して全体が均一な温度になろうとします。つまり周りに比べて温かい部分は上昇し、そのぶん冷たい部分は下降します。このときの熱移動が対流です(図3)。味噌汁を温めるときなどはこの対流が鍋の中で起きているのが実際に見えますね。
地球の大気も、地表から上空11kmあたりまでの間で常に対流が起こって天候に影響を与えており、ここが対流圏と呼ばれている所以です。
空気は優れた断熱材ですが、複層ガラスの2枚のガラス間の密閉された空気でも対流が起きる可能性があり、この現象をできるだけ避けて断熱性を確保するために様々な工夫がされています。

断熱のまとめ

【画像】(図4)カップのお湯が冷めていく原理

(図4)カップのお湯が冷めていく原理

対流、伝導、放射によってカップのお湯は冷めていきます。

さてここに熱いお湯の入ったカップがあると想像してください。時間が経つにつれカップもお湯も常温に近づいて(冷えて)いきますが、このときの熱移動は
(1)お湯の温度がカップに伝導していく、
(2)対流によってお湯の温度が下がる、
(3)カップの温度は放射によって周りの空気中に拡散していく、
という熱移動の3原則を活用しながら冷えていきます(図4)。この3点の熱移動をそれぞれの場面でできるだけブロックすることが、お湯を冷まさない良好な断熱につながることになります。

(表1)代表的な物質の熱伝導率(単位:W/m・k)

【画像】(表1)

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