導入事例

ガラスが変わると暮らしがかわります。
ガラスに求められている機能や性能に関する知識をご提供します。

安心・安全

14.ガラスに安心を求めて-2
(熱と炎の遮断)

防火

建物の耐火性能が向上しても、窓が炎の延焼経路になることがあります。炎を一定時間食い止める防火のためのガラスについて解説します。

炎が窓を通過する

【画像】(図2)

(図1)

外壁や屋根が不燃材料でも、窓から延焼するケースがある。

都市部のいわゆる防火地域には火災が延焼しないための多くの規制がありますが、窓も延焼のウイークポイントと考えられるため(図1)、使用するガラスに制限があります。

そもそも板ガラスは均等に熱した場合、割れずに700℃付近から軟化が始まるのですが、火災の場合は炎の熱がガラスに不均等にかかり、その温度差で熱膨張が乱れて歪が生じ割れることになります。5ミリ厚の板ガラスでは一枚の中に60℃以上の温度差が生じると割れるという実験結果があります。これはガラスコップに熱湯を注いだ時と同じ現象です。こうしてガラスが破壊した場合、破片が脱落し、そこにできる開口が炎の通過点となるのです。

このようなことから、建築基準法で言う「延焼のおそれのある部分 (注1)」の開口部にガラスを使う窓やドアは、「防火設備」として認定されたものであることが必要です。この認定を受けるための遮炎時間は20分(屋根に使う場合は30分)とされています。

(注1)建築基準法でいう「延焼のおそれのある部分」があるのは、地域地区で防火地域・準防火地域に指定された地域内にある建物です。指定のない地域の建物は対象外で、開口部に防火設備を使うことは義務付けられていません。

金網で破片を保持する

防火設備に用いられるガラスは従来から「網入板ガラス」(写真1)が用いられてきました。新築住宅の一部のガラスに、なぜここだけ網が入っているのだろう・・と思った方もいると思います。網入り板ガラスの金網はガラスの中に入っているため熱でクラックが入っても板形状を保持することが可能で、破片の脱落を一定時間防ぎ、延焼防止に貢献します。この金網は軟鉄製で、ガラス内部にある場合は問題ありませんが、エッジが露出しているとその部分の金網に錆が生じ強度が低下するため、エッジに水分が回らないような処理(納まり)が必要になります。

【画像】(写真1)

(写真1)網入ガラス

撮影写真:©木下純

金網のない防火ガラス

防火設備に金網のないガラスを、という希望からフロートガラスと同じ透明な防火設備用ガラスも開発されました。一般名称を「耐熱強化ガラス」と言います。これは文字通り強化ガラスの一種で、フロート板ガラスを素板として製造されます。一般の強化ガラス5ミリ厚では温度差170℃まで割れないという実験結果があり、飲食業などオープンキッチンのガス台付近の仕切りガラスに使うことがありますが、耐熱強化ガラスはこれよりさらに強力な強化処理を行い、より耐熱強度を増したガラスです。

防火ガラスは一定時間炎の貫通を食い止めることが使命と前述しましたが、網入り板ガラスは割れても機能する商品であるのに対し、耐熱強化ガラスは割れずに持ちこたえるガラスです。大面積の開口部にとって網のないことは視界や建築デザイン上で大きなメリットと言えるでしょう。

防火設備に使われる板ガラスはその性能を十分に発揮するためにエッジの加工形状やガスケット(ガラスの周囲のサッシとの間にあるゴム状の部品)等の副資材にも特別な仕様が決められています。これらはサッシと一体となって「防火設備」として個別認定された開口部の構成部品となります。

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