導入事例

ガラスが変わると暮らしがかわります。
ガラスに求められている機能や性能に関する知識をご提供します。

安心・安全

13.ガラスに安心を求めて-1
(災害時の安全、防犯の安心)

防災・防犯

割れると危険なガラスですが、割れないガラスはありません。ガラスに安全を求める場合、破壊しようとする力(現象)によって対策も異なります。ここでは災害と人的な破壊について考えます。

自然災害、特に地震・風・飛来物による破損

【画像】写真1 ガラスの危険な割れ方

(写真1)ガラスの危険な割れ方

平常時、窓ガラスの大きさと板厚の関係は、過去のデータをもとにした推奨基準があります。基本的に地上から高い位置にあるガラスほど耐風圧の関係で厚いガラスが使われます。これとは別に、予期しないことが起きる災害時の対策は、ガラス破損を前提にいわゆる二次災害による被害を防ぐ、防災の観点から考えることになります。
ガラスの割れ方は状況によって様々で、細かい破片が広範囲に飛散することもあれば、大きな破片が落下することもあります(写真1)。

安全のためにはまず、割れても破片が飛散しないこと、落下(脱落)しないことが必要です。災害時の避難場所に使われるガラスには特にこの対策が必要になりますが、この機能を持つガラスが「合わせガラス」です(図1)。飛散防止にはガラスの片面にフィルムを貼る方法もありますが、ガラス表面に処理されるため長期的な耐久性に劣ることと、サッシののみ込み部分をカバーできないため脱落の危険が残る弱点があります。

【画像】図1合わせガラスの構成

(図1)合わせガラスの構成

PVB(ポリビニルブチラール)という強靭なフィルムが2枚のガラスの間に入っている。

空き巣狙い、人的な破壊

【画像】写真2

(写真2)

撮影写真:©木下純

もうひとつは、ガラス破りのような悪意に基づく破壊です。平成10年前後に空き巣狙いが全国的に頻発し、その多くがサッシのクレッセント錠やドアノブ付近を破壊してロックを解除し侵入したことから、いわゆる防犯ガラスが普及しました(写真2)。

防犯のためのガラスはまず短時間で貫通する穴をあけにくいものである必要があります。また無人の環境と人目のある環境ではリスクが異なります。このため防犯ガラスにはグレードがあります。このグレードは貫通穴をあけるのに要する時間が基準になっています。(高グレードほど時間がかかる)防犯ガラスも構造的には「合わせガラス」です。そしてグレードはPVBフィルムの厚さで決まります。最高グレードでは相当な工具を用意して時間をかけないと開口できません。

防犯という意味では建物の窓だけでなく、商業施設のショーウインドウなども対象です。日本では少ないですが、路上に置かれた高価な商品を展示するショーケースにも防犯ガラスは使われています(写真3)。この画像はベルリンで見かけたショーケースで、夜間も照明され商品をアピールしています。何か所か割ろうと試みた跡がありましたが、犯人はとても手が出ないとあきらめたようでした。

【画像】合わせガラスの構成

(写真3)路上に置かれたショーケース

撮影写真:©木下純

合わせガラスとは

車のフロントガラスにも使われる合わせガラスは、2枚の板ガラスをPVB(ポリビニルブチラール)という強靭な樹脂フィルムを間に入れて圧着した商品です。PVBは加工前は半透明の約0.4ミリまたは約0.8ミリのしなやかなフィルムで、強度を高めるため複数枚重ねて使う場合もあり圧着すると透明になります。単板ガラスでは破損時に飛散・貫通が生じますが、このPVBの板ガラスとの密着性と強靭な伸縮性能が破片保持と耐貫通性能を発揮します。
合わせガラスの製造には接着剤は用いず、オートクレーブといういわば巨大な圧力釜(写真4)の中で130℃前後の熱と10気圧程度(10~15kgf/㎝2)の圧力をかけることにより、ガラスとPVBフィルムが強固に密着します。

一般的な環境下でPVBとガラスが剥離することはほとんどありませんが、エッジから水分が繰り返し侵入するような場合に部分的な剥離のリスクがあります。このため合わせガラスはエッジを露出したままで屋外では使えません。
最後に念のためですが、「網入りガラス」は一定の飛散防止機能を持ちますが防犯のためには役立ちません。このガラスは次項で述べる「防火」の機能を持つガラスです。

【画像】(写真4)

(写真4)合わせガラスを製造するオートクレーブ

撮影協力:三芝硝材株式会社

撮影写真:©木下純

このコラムに関連する商品