導入事例

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ガラスとは?

22. ガラスが割れる時-4
錆(サビ)によるガラスの損傷

破損・破壊

衝撃や熱以外でもガラスが破壊することがあります。ここではいわゆる「錆割れ」と呼ばれる、網入り・線入り板ガラス特有の現象を述べます。

錆割れ

錆割れというのは文字通り鉄錆が発生することによってガラスが損傷し、その結果No.21で述べた熱割れなどの原因になることです。といっても、例えばガラス面に接している鉄が錆びてもガラスが割れることはありません。網入り板ガラス、線入り板ガラスのように鉄材がガラス内にある製品に起きる現象です。
錆は鉄と酸素が水分の媒介などで結合し酸化鉄になったもので、錆びる前より体積が増えます。錆は放置すれば進行(増殖)するため、この体積膨張がガラス部分をじわじわと押し拡げ、ガラスエッジに微細なクラックが発生して強度の低下を引きおこします(図1)。
強度の低下した部分に、熱や風圧によるたわみなどによる応力が集中すると、そこが起点となって割れを生じることがあります。

【画像】(図1)

(図1)

錆割れのイメージ

板ガラスの中にある軟鋼の露出部分の錆が進行し体積膨張によりガラスを内部から押し拡げる。

ガラスエッジが問題

網入りや線入り板ガラスは、板状に成型される初期段階で、まだ熱く柔らかいガラスの中に鉄網や鉄線を挿入して製造します(図2)。錆割れの原因は、ガラスを切断した際に、鉄部分が空気中に露出してしまうエッジ部分にあります。
一般的な住宅アルミサッシへのガラスの納まりは、グレイジングチャンネルという柔らかな樹脂材料をガラスのエッジ全体に巻き付けてサッシに嵌め込んでいます(図3)。このため下部は雨や結露水がガラスエッジに入り込むことが構造的に避けられないのです。

【画像】(図1)

(図2)

網入り板ガラスの製造イメージ

ガラスが固まる前に鉄網を厚さの中に挿入していく。

【画像】(図3)

(図3)

一般アルミサッシのグレイジングチャンネル納まり(下辺部)

錆割れを避ける施工

ガラスの中に入っている鉄網や線は、太さが0.5㎜程度の「軟鋼」と呼ばれるもので、錆を防ぐためにメッキが施されています。しかし前述のようにガラスを切断すると鉄線の断面が露出するため、(No.21網入り板ガラスの切断面の写真参照)この部分を水や空気に触れさせないことが錆割れ防止策になります。
グレイジングチャンネル納まりの場合はガラスエッジに防錆材を塗布し、サッシ内の乾燥を保つ配慮が必要です。
網入り板ガラスはキャノピー(部分的な屋根)に使われることも多いのですが、端部を露出したままにすることは避けなければなりません。また、グレイジングチャンネルを用いないビルサッシなどの場合は周囲全体にブチルゴム系テープを貼り枠との間をコーキング材でシールし、水が浸入しない構造にすることが最良の方法です。網入り板ガラスは万一の飛散防止や防火のためになくてはならないガラスですが、錆というリスクを避ける必要のあるガラスでもあります。
鉄線の代わりに錆にくいステンレスなどを使う研究もされていますが、ガラスの製造時や切断の問題などから一般的に用いられるまでには至っていません。

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