導入事例

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ガラスとは?

27 「透明」のキーワード
~ガラスが透明な理由~

透明・透視

「固体の透明性・透視性」のキーワードは、①組成が光を通す、②非結晶(アモルファス)、③表面が平滑、の3点です。

透明ということ

物質が透明であるためには、まず組成そのものが光(可視光線)を通すものであること、光が通過するためには組成の中で光の反射や吸収がないか、あってもわずかであることが必要です。
板ガラスの主原料はシリカですが、シリカの主成分である二酸化ケイ素(SiO2)は不純物の混入しない純粋なものは無色透明です。シリカの結晶として自然界で私たちが目にするものに水晶があります。
これは光を通す石であることはご存知の通りです。
水晶は多角形の結晶で(写真1)、地殻のなかで時間をかけて結晶として形作られたもの。
シリカは存在環境の温度や圧力によって結晶化したりしなかったりいろいろな形を現しますが、ガラスは同じ成分でも結晶化していないところにその特徴があります。

水晶

(写真1)

水晶

写真:©木下純

非結晶の固体、アモルファス物質

結晶するということは、構成する分子構造が規則正しい配列で立体的に並ぶことで、構造に秩序がある反面、結晶の界面で光が反射され緻密な結晶ほど透視性は失われていきます。
つまり結晶化は光は通すけれども透視性がなく、向こう側が見えるためには結晶化していない「非結晶(非晶質とも言う)」が条件です。(ガラス内にナノメーター単位で結晶を生じさせた特殊用途(耐熱)の透明ガラスもあります)
液体の分子は結晶格子を立体的に構成していない非結晶で、ガラスは構造的にはこの液体のままなのです(図1)。
結晶を持たない液体が粘度を増し、常温で固体化しているものがガラスです。従ってガラスは結晶構造を持たず、この固体の状態を「アモルファス」といい、ガラスの基本的な性質と理解されています。
一部のプラスチック、例えばポリカーボネート樹脂もアモルファスですが、アモルファス物質がすべて透明というわけではありません。例えばゴムもアモルファスで、アモルファス金属というものもあります。

ガラスの分子構造イメージ

(図1)

結晶状態とガラス状態のモデル図

AGC板ガラス建材総合カタログより

ガラスの「アモルファス」な特徴

結晶を持たないガラスの特徴は破壊形状にも現われます。水晶を割るとわかりますが、結晶しているものは分子結合の秩序に従ってある規則的な割れ方をします。これに対しガラスは割れていく方向がまったく予測できないのです。
また、ガラス破片はとても危険で破断面の角度は非常に鋭くなる場合があります。あくまで理論上の話ですが、鉄の包丁の刃先角度はがんばっても鉄の結晶分子以下にはできません。でもガラスの刃物があるとすると、結晶構造が無いぶん更に鋭利にできることになります。
実際、自然の作ったガラス材である黒曜石を、古代人は刃物や矢尻として利用していて、割れ方によっては鋭い刃物が手に入ることを知っていました。
もうひとつガラスの特徴として、明確な「融点」がないことが挙げられます。固体から液体に、また液体から固体に移行する温度は、水の場合基本的に0℃でそれを境に固体と液体に分かれます。それに対し建材用の板ガラスの温度を上げた場合700℃くらいから軟化が始まり、ゆるゆると粘度が増していきます。ガラスが液状になっている溶解窯の温度は約1600℃で、個体から液体までの間に大きな幅があるのです。

表面の平滑性、内部の均一性

向こう側がありのままに見える透視性には表面性状と内部の均一性が関係します。
板ガラスやワイングラスを見ると、表面は滑らかでツルツルなため表面反射があります(写真2)。このような表面に細かい傷をつけ摺りガラス状にすると表面の細かな凹凸によって光が乱反射し透視性は失われます。
また内部に脈理(密度が一定でなく不均一で屈折率が異なる部分)があったり、厚みに歪がある場合も正確な透視像は望めません。
板ガラスの透明度もさることながら、製造方法である「フロート板ガラス製法」は、表面の平滑性と内部の均一性が、幅3m×長さ10mという巨大なものでもほぼ完ぺきに保たれている画期的な技術と言えるのです。

透明ガラスの表面と反射

(写真2)

透明ガラスの表面と反射

ワイングラスと透明フロート板ガラス
写真:©木下純
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