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20. 複層ガラスの内部結露とは?

熱・温度・湿度

ガラスは経年劣化がほとんどない材料ですが、保証期間を定めている商品があります。その保証の対象のひとつが複層ガラスの「内部結露」です。

内部結露とは

内部結露は複層ガラス(ペアガラス)の空気層内に結露が生じてしまう不具合です。ガラスの内側なので拭いてもとれず、透視性が損なわれるばかりでなく、Low‐E複層ガラスではその金属膜にも悪影響を与え、断熱性能も低下します。
内部結露はガラスの室内側に発生する結露と同じく、寒冷期に気付きます。これは空気層(中空層)内に含むことのできる水蒸気量が増加して水滴(くもり)として現れるからです。内部結露は日中に温度が上がるといったん消え、ガラスが露点温度(*)以下に冷えるとまた現れてきます。
(*)結露のできる原理や露点温度についてはコラムNo.3結露-1をご参照ください)

複層ガラスの緻密な構造

複層ガラスの断面構造を(図1)で見てみましょう。2枚の板ガラスの間隔を保つのが周囲にあるアルミや樹脂のスペーサーという構成部材で、この中に中空層の空気を乾燥状態に保つ吸湿剤が入っています。
ガラスとスペーサーは「封着材」と呼ばれる材料で二重にシールされ、中空層は外部空気と流通がなく密閉された状態にあります。
密閉された中空層は気圧の変化でわずかに膨張や収縮がありますが、板ガラスの剛性とシールの強度により密閉状態は保たれます。
一方、複層ガラスは製造時の環境湿度がそのまま空気層として封入されるため、使用環境によっては内部に結露が発生してしまう可能性があります。
これを防止するため、製造後の中空層の空気を常に乾燥させておくのが吸湿剤の役目です。

【画像】(図1)

(図1)

内部結露の発生原因

このように、対策が施されているにもかかわらず内部結露が発生してしまう原因は二つあります。
ひとつはガラスにクラックが生じている場合。これでは密閉状態が失われ外部の湿度が空気層に入り込んでしまいます。
もうひとつはスペーサーとガラスを接着している封着材が部分的にはがれてしまう場合で、これは複層ガラスのエッジ(主に底辺)が水に浸かる状態が続くことが影響しています。
複層ガラスと一般的なサッシの底辺部の断面の納まり(図2-1〜図2-3)から内部結露の発生原因を説明します。

【画像】(図1)

(図2-1)

ガラスエッジやサッシ底辺に水が入る可能性があるのは図中の(A)と(B)の2か所です。どちらも正常な状態では密着していますが、グレイジングチャンネル(ガラスとサッシの間にある樹脂部材)の経年劣化や毛細管現象で雨水や結露水がガラス下部に入り込む場合があります。水が入ってもグレイジングチャンネルとサッシには水抜き穴が設けてあるため通常は排水され、エッジ部分は乾燥状態を保ちます。

【画像】(図2-2)

(図2-2)

しかし何らかの理由で水抜き穴がふさがって排水が困難な状態になると、水はサッシ内に溜まり続け、やがてガラスエッジが水に浸かったままになります(図2-2)。そして日射などにより暖められた水はシールの劣化を促進してはがれていきます。水の蒸発による湿度は高いほうから低い方に移動しようとするので、はがれた部分のガラスとシールの間にできた隙間(C)を通って乾燥している中空層に入り込みます。

【画像】(図2-3)

(図2-3)

中空層に入った水蒸気は初めは周囲の吸湿剤で吸収されますが、やがて吸湿剤の能力は限界になり、中空層内の水蒸気量が増加していきます。そして水蒸気量が飽和状態を超えると中空層側のガラス表面に水滴やくもりとなって現れるのです(図2-3)。

シールを劣化させるもうひとつの原因に紫外線があります。現在の標準的なサッシとグレイジングチャンネルは日射が直接シールに当たりにくい形状になっていますが、特殊納まりの場合は複層ガラスとサッシのかかりしろ(図2-1参照)を十分に確保しシールを直射日光から保護するように施工上で留意する必要があります。

内部結露に対する10年保証

内部結露は前述したように①サッシの排水不具合、②暖められた水や紫外線によるシールの劣化、③水蒸気圧の原理、などの要因が好ましくない方向で影響しあった結果です。
シール材には有機材料を使用しているため、様々な要因によっては劣化が避けられず寿命があります。しかし筆者が平成元年に採用した樹脂サッシ+複層ガラスは現在でも内部結露は発生していないように、全ての複層ガラスが建物の寿命内に内部結露が起きるわけではありません。
そこで、板ガラスメーカーでは一つの区切りとして、初期不良を含め10年間を保証の対象としているのです。
(対象品種、施工や使用条件などに関する免責事項があります。)
近年、新築建物の寿命は延びつつありますが、複層ガラスのような構成部品にも適切なメンテナンスや交換は必要なことと言えるでしょう。

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