導入事例

ガラスが変わると暮らしがかわります。
ガラスに求められている機能や性能に関する知識をご提供します。

快適な室内

10.音ー3(音と板ガラス)

ガラスを用いて快適な音響環境を作ろうとする場合留意すべきことがあります。
<音の反射><共鳴透過><コインシデンス効果>の3点です。

音の反射

ガラスは光を反射するように、音も良好に反射します。これはガラスが硬く均一な材料でかつ表面が極めて平滑なため、クロスや木材などのように音の吸収がないからです。
反射が大きな残響を産むなどマイナスに働くのは、閉じられた空間に板ガラスや磨いた石材、タイルなどが多用されている場合ですが、特に壁面間仕切りとしてガラスの箱のように4周にガラスやミラーが平行に向かい合う空間(図1)では、床や天井で良好な吸音を行うなどの対策が必要になります。

【画像】(図1)

(図1)

ガラスの箱のような空間では音が反射してしまう

共鳴透過

【画像】(図2)

(図2)共鳴透過現象

同厚の2枚の板ガラスが共鳴して音が抜けてしまうこと。

文字通り、共鳴することによって音が透過してしまう現象です。同じ厚さの2枚の板ガラスが、狭い空気層を挟んで向かい合っている複層ガラスに起きる固有の現象で、音源に近い方のガラスの振動が、空気層をバネとしてもう片方のガラスと共鳴し、結果としてある周波数の音が透過してしまうのです(図2)。
3ミリ厚のガラスを2枚使う複層ガラスでは250Hz~400Hzの低い周波数でこの現象が発生することがあります。
この結果、3ミリ厚単板に比べこの音域でわずかですが遮音性能が落ちます。複層ガラスは遮音性能が良い、とは一概には言えないのです。しかし「音ー2」で防音・遮音の第一歩は隙間をなくすこと、と述べたとおり、現実的な住宅の引違い窓を考えると、共鳴透過以前にサッシ自体の気密性が問題になります。窓の総合的な防音性能は板ガラス単体だけでなく、サッシを含めて考えるべきでしょう。

この共鳴透過現象を軽減するために、複層ガラス単体での解決法としてはヘルムホルツ共鳴という原理を応用する特別なペアガラスも商品化されています。

コインシデンス効果

【画像】(図3)

(図3)コインシデンス効果

板ガラスの厚さにより特定の周波数が透過すること。結果としてその部分の遮音性能が低下する。

ある周波数(高さ)の音だけが単板ガラスを透過してしまう現象です。
板ガラスは均一な組成を持つ剛性材料ですが、このような材料に多くの周波数を含む音が入射した場合、厚さによって固有の周波数が反応する(振動する)現象が起きます。その結果、他の周波数は遮蔽しても特定の周波数だけが透過してしまうのです(図3)。
ガラスの場合この周波数は厚さによって異なり、3ミリ厚では4000Hz付近、5ミリ厚では2400Hz付近、網入り板ガラス(6.8ミリ)では1800Hz付近で発生します。

【画像】(図3)

(図4)合わせガラス防音タイプの構成

特殊な中間膜が音エネルギーを吸収して遮音性能を高めます。

余談ですが、以前筆者が窓の開かないオフィスビルで仕事をしていた時、屋外の喧騒は聞こえないのに救急車のサイレン(ピー・ポーという音)が妙に聞こえてくることに気付きました。救急車のサイレンは770Hzと960Hzのくりかえしと決まっているそうですが、10ミリ、12ミリ厚のガラスのコインシデンス周波数はそれぞれ800Hz、1000Hzでサイレン音の周波数に近く、サイレン音の透過はコインシデンス効果によるものだったのかもしれません。
合わせガラスとしてコインシデンス効果を軽減する方法もあります。合わせガラス防音タイプ(図4)は中間膜が振動を吸収する役割を持ち、たとえば同じ6ミリ厚でも3ミリ+3ミリの合わせガラスでは単板6ミリに比べコインシデンス周波数付近の遮音効果が向上します。

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