導入事例

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快適な室内

16. 光-2 光と電磁波とガラスの関係

何かと話題になる電磁波ですが、目に見える光や放射線電波など、ガラスと電磁波の関係を考えます。

「虹」から光のスペクトル(分光分布)を考える

私たちが一般的に「光」という場合、明るさをもたらす光のことを言うと思います。これを「可視光」と言いますが、太陽光は言うまでもなく最も強力で生命になくてはならない光です。太陽光の中に含まれる可視部分の波長が分解されて自然界で見える現象が「虹」で、空気中の水滴がプリズムの役割をして7色の帯(スペクトル)として見えます。
7色と言いますがこの色数は世界的に決められたものではなく、虹の中に明確に見える色は赤・黄・緑・青・紫の5色ではないでしょうか。各色の間には無段階に変化する色が存在していますが、虹の円弧上の色の順番は常に決まっています。

【画像1】虹

(図1)

一番波長の長い赤が外側に、そして波長の短い紫が内側に来ます。(図1)
余談ですが、条件が良いと虹は2重に見えます。外側にできる虹を副虹と言い、これは水滴の中で光が2回反射した結果で、色の配列は主虹と逆になります。
虹は各波長の屈折率が異なることから現れる現象ですが、太陽光はほかの波長も含んでいて赤の外側には赤外線域が、紫の外側には紫外線域が存在しています。しかしこのどちらも人間の目では見ることはできません。

好まれる電磁波、嫌われる電磁波

このように可視光域の外側には目に見えない波長があって、これらの総称を「電磁波」と呼びます(図2)。
これは太陽光のように自然界に存在するものばかりではなく、人工的に作り出すものもあります。

【画像】(写真1)

(図2)電磁波

電磁波は大きく分けると「放射線」「光」「電波」の総称で、それぞれの波長の用途によりさらに分割されて名称がつけられています。ここでは波長と用途の一例を挙げています。

電磁波はその波長によってさまざまな性質や用途があり、「放射線」「光」「電波」に大きく分けられますが、波長が1ピコメートル(10億分の1ミリ)のガンマ線から100㎞の超長波まで広範囲に連続した一連の波です。
さて、図2に見るように光も電磁波の一部で、可視光部分は全体からみればわずかな範囲に過ぎないのですが、一般的な透明板ガラスは「光」の部分の電磁波をどのように透過しているのでしょうか。それをグラフにしたものが(図3)です。
透過は可視光域だけでなく紫外線の一部から遠赤外線に及びます。このことはガラスを通しても日焼けすることや日射が暑いと感じることを意味しています。

【画像】(写真2)

(図3)透明板ガラスの分光透過率

可視光としての波長は380nm~780nmとされています。
そして透明板ガラス(3ミリ厚の場合)は概ね波長300nmから5000nmを透過しています。

選択透過への研究開発

一般的に、電気を通しにくいものは電波を透過する性質があるといわれますが、ガラスも絶縁体で電波は透過します。
窓(ガラス)のある室内では携帯電話をはじめ、テレビやラジオの電波も受信できるのはご存知の通り。
しかし近年多くの電子機器に使われたりそこから出る電磁波が入り乱れると、生活シーンによって透過したい部分と遮蔽したい部分が発生してきます。
特に向こう側が見えるガラスでは視覚を維持しながら電磁波を部分的に制御したい要求も増えてきました。
光の部分で言えば、このコラムNo.7で述べたLow-E複層ガラスは可視光域を犠牲にすることなく一部の赤外線域を遮蔽する機能、すなわち選択[非]透過するガラスなのです。
このように近年の板ガラス開発の大きな方向のひとつが、ガラスに電磁波の選択透過機能を持たせる研究です。
一般的な透明板ガラスよりさらに高度に紫外線域をカットするガラスや、窓からの通信データの漏えいや、侵入する電磁波による機器の誤動作を防ぐなど、いわゆる電磁遮蔽機能を持つガラスも開発されています。
ガラスの最大の特徴である光の透過を保ちながら、電磁波域をコントロールする選択透過機能で、板ガラスはさらに快適さに寄与する材料となってきました。

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