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【商業施設事例】KITCHEN BAUM プランテックアソシエイツ 大江 匡

カラーガラスの進化が押し広げるデザインの可能性

反射性とメンテナンス性

著名パティシエ・魵澤信次氏率いる「レ・アントルメ国立」が、焼き菓子を中心とした新ブランドとして立ち上げた路面店のインテリアです。近くに私たちが設計したパティシエ養成学校「エコール 辻 東京」があり、そこを見られての依頼でした。

洋菓子店らしい明るくフェミニンなイメージの中にも、どこか都会的でシャープな雰囲気を醸し出したいということで、調理室内の作業もすべて見せていく“ライブ・キッチン”という考え方をベースにさまざまなカラーバリエーションを提案しました。その結果、最終的にカラフルな商品を引き立たせる“白”がベースカラーに、桜並木で有名な国立らしさということで“ピンク”がアクセントカラーに選ばれました。

そこでメインの仕上げ材としてカラーガラスを採用したわけですが、これは小さな空間を、その反射によって少しでも広く感じさせたかったから。また、マンションの1 階部分に位置するこの店舗は、管理組合との兼ね合いで、ファサードでやれることが限られていた。そこでオールLED照明にして店舗自体を輝度の高いライトボックスとして位置づけ、それによって道行く人々を引きつけることを考えました。ここでも、LEDをきれいに反射させるカラーガラスの存在は、大きな役割を果たしています。

また、この店舗では、カラーガラスの持つ高メンテナンス性という特性に着目し、壁だけでなく商品カウンターの天板にもカラーガラスを全面的に採用しています。

ご存じの通りカラーガラスは、その平滑さによる反射性という特徴によって汚れがかなり目立ちます。しかも、その汚れを拭き取りやすい。一昔前は、汚れが目立つ素材は食品を扱う店舗に限らず敬遠されがちでしたが、いまは逆で、あえて汚れが目立つ素材を使い、スタッフに掃除に対する注意を喚起させるやり方が一般的。店舗全体を清潔に保つオペレーションをするためには、汚れがわかりやすく、しかもそれを簡単に拭き取ることができる素材こそが効果的なのです。

その意味でもカラーガラスは、今回のような食品を扱う店舗の仕上げ材として、うってつけの素材だと思っています。

表現性と機能性の両立

カラーガラスは、私が設計を始めた頃にはすでにあった、さして目新しくない素材です。

しかし、当時のものは、裏にべったりただ色を塗ったような鈍い感じだったり、耐久性にも問題があったりで、使える場所が非常に限られていた。つまり、いまのカラーガラスとは名前は同じでも、似て非なるものだったわけです。

とくに“白”の進歩には驚かされますね。昔は“白”はなくてその後出てきたわけですが、つい最近まで“白”といってもブルーが入っていたりアイボリーが入っていたりして、真っ白い空間をつくろうとしてもどうしても色がついてしまうという状態だった。しかし、今回使った「ラコベル」は、ほとんど“純白”と言ってもいいくらいの白さを具現化しています。もちろん他のカラーにも透明感と発色の良さを主体にめざましい進歩が感じられて、それによってデザインの可能性が大きく広がったように思います。

これからの要望ということでは、表現性の面では、もう少し大きなサイズが取れるようになるといいですね。大空間にガラスを使うとどうしても目地が気になってしまう。現場で溶接できるといいんですけどね(笑)。

また、機能面では、解体後もリサイクル工程がきちんと存在しているガラスが欲しいですね。表現性の追求から設置後や解体後の機能性にまで目を向けて、それらを両立させることで、ガラスの可能性はまだまだ深まり、それによって空間デザインの可能性も大きく広がるのだと思います。

【使用ガラス】

ラコベル』 ピュアホワイト  『マテラック』 ピュアホワイト

大江 匡(おおえ・ただす)

Profile

プランテックアソシエイツ代表取締役。1955年大阪生まれ。東京大学大学院工学建築研究科修了。主なプロジェクトに、「恵庵」、「玉川高島屋SC新南館」、「ソニーシティ」など。グッドデザイン賞、JID賞、JCDデザインアワードなど、受賞多数。

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