透明度の高いガラスと特殊塗料の採用によって、クリアでヴィヴィッドな色の再現性を実現した、AGCのカラーガラスシリーズ。
今回のプロジェクトは、雑貨店「プラザ」。店内にはカラフルな商品が大量に並び、短いスパンで入れ替わっていく。そうした空間で、店舗としてのアイデンティティーも確立する必要がある。
設計者の高宮央幸氏に話を聞き、デザインコンセンプトとカラーガラス使用の発想について語ってもらった。
このお店は、三重県桑名市の「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」の中にある雑貨店「プラザ」です。デザインをするにあたってまず考えたことは、「色」によるショップキャラクターの創出でした。
さまざまな店舗が個性を競い合うモール内においてその存在感を際立たせるためには、ショップコンセプトや品揃えの特徴などをわかりやすく伝達するアイキャッチが不可欠です。バラエティ豊富にアイテムを揃え、かつシーズン毎に商品が大幅に切り替わっていく「プラザ」の場合、ディティールを追求し過ぎるデザインであったり、商品ボリュームのみを前面に押し出した演出だけでは、店舗の持つ魅力や個性が伝わらない。そこで、細かい線を極力廃した大きな面で空間を構成しようと考えました。壁面や柱まわり、什器やカウンターバックなどに、ターゲットである若年層に訴求するヴィヴィッドな色を大胆に配し、「プラザ」という店舗を表現するキャラクター付けを施すことにしたわけです。今回のアウトレットモールのように、テクスチュアによる統一的な表現などが予算的に難しい場合は、色によるショップアイデンティティーの創出が大きな武器になると思います。
カウンターバックや柱まわりなど、ポイントとなる場所にカラーガラスを採用したのは、ローコストでありながらも、モール内の他店舗と一線を画す高級感を演出するためです。ガラスならではの際立った平滑性は色彩に艶やかな輝きを与え、ガラスならではの耐久性と高メンテナンス性はその輝きを長く保つことに寄与します。
この店舗は、私が初めて設計させていただいた「プラザ」のお店だったのですが、続く第二弾、第三弾の店舗においても、カウンターバックのカラーガラス使用が踏襲されるほど、クライアントからも気に入ってもらえる仕上がりとなりました。
ガラスならではの平滑性がもたらすヴィヴィッドな発色性はもちろんですが、僕はカラーガラスの本当の魅力は、その微妙な反射性にあると思っています。
ミラーのように対象そのものをただ単に映し出すだけではなく、面材としての存在感を感じさせながら、その上で周辺環境や人の動きを柔らかく映し込んでいく。濃い色を選択すれば反射は強くなるし、淡い色では逆に弱くなるというように、その反射度合いも自在にコントロールできる。しかも透明なガラスの裏側に塗装が施されているため、ガラスの厚みの分だけ内部で乱反射が起こり、表面塗装の素材とはひと味もふた味も違う複雑な深みを表現することができます。ガラスの発色性に反射性という要素を加えることで、空間にさまざまな表情を与えられることが、カラーガラスの持つもっとも大きな魅力だと思っています。
例えば、圧迫感を感じるほどの狭小空間における奥行きの表現、素晴らしい眺望を望める開放的な空間における広がりの表現、人の動きや時々刻々と移りゆく環境の変化をリアルタイムで空間内に取り込んでいく時間の表現……。設計者の頭の中だけでは完結しない、そして他の素材では決して表現しきれない空間の多彩な表情を、カラーガラスはつくり出してくれるのです。
1967年生まれ。98年カザッポアンドアソシエイツに入社。
2009年独立し、スペシウム設立。
物販店やバーなどの商業施設の他、住空間のインテリアデザインも手掛ける。