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【商店建築】東京電機大学「東京千住キャンパス」 槇総合計画事務所 さとうかずお

交流を生み出す空間にマットなカラーガラス

透明度の高いガラスと特殊塗料による様々な色調で、空間クリエイターから熱い注目を集めるAGCのカラーガラスシリーズ。その内装材としての可能性を、事例から検証するこのレポート。今回のプロジェクトは、北千住駅近くで竣工した東京電機大学「東京千住キャンパス」だ。設計を担当した槇総合計画事務所の佐藤和夫氏に話を聞きながら、カラーガラス利用の可能性を探った。

交流を生み出すロッジアとアゴラ

このプロジェクトは、東京・神田錦町から北千住駅東口再開発地区へのキャンパス移転計画です。開発テーマは“開かれたキャンパス”。学部や学科を超えた学生同士の交流はもちろん、さらに地域住民とともに、街づくりの核となる場をともにつくりあげていくことがその目標です。

そのために掲げたのが、「ロッジア」と「アゴラ」という概念です。「ロッジア」とは“公共空間の広場”という意味合いで、学生と地域住民とが交わる場のことを指しています。キャンパス内は4つの街区に分かれているのですが、その中心を走っているのは区道です。その区道はもちろんのこと、敷地境界線上にも門や塀を設けることなく地域住民にキャンパス全体を開放し、日々の散歩や駅へのショートカットとして誰でもが日常的に利用できる場の創出を考えました。そうした開放的なキャンパス内にあるロッジアでは学園祭など大学主催の催しだけでなく、たとえば地域主催の秋祭りのイベントスペースになるなど、行政と連動した場の活用がなされる予定です。

一方、「アゴラ」とは“小規模な広場”という意味合いで、ここで学ぶ学生たちが、学部を超えた交流をする場のことを指しています。キャンパス内に立ち並ぶ各棟には、2層吹き抜けのヴォイド空間が数カ所に設けられ、その大空間が外観上のデザインアクセントとなると同時に、フロア毎に分断されがちな学生たちのコミュニケーションを促進する場として機能しています。

こうしたロッジアとアゴラが生み出す様々な種類の交流によって、このキャンパスが、学生たちにとっては意見交換し合う場、情報を吸収する場として機能し、地域住民にとっては刺激や安らぎを得る場として機能することが目指されているのです。

木や金属とも相性のいいニュートラルなカラーガラス

この開かれたキャンパスにおいて、各棟のエントランスロビーは、パブリックとプライベートを分ける境界線として位置づけられています。ロビー内には誰でも入れますが、教室などそこから先に進むにはIDカードによる厳格なセキュリティチェックが必要となります。外部の風景を建物内へと招き入れ、建物内の様子を屋外へとにじみ出させるガラスを用いたこのロビーは、パブリックとプライベート双方からの「見る/見られる」の関係が意識された、2つの場の仲立ちとなる空間として設計されています。

ニュートラルな空間にふさわしく、エントランスロビーは白を基調としてまとめ、ベースとなる壁面には高透過ガラスを使用したマットな質感が特徴のAGCのカラーガラス「マテラック ピュアホワイト」を採用しました。その理由は、空間の顔となる赤いトラバーチンの装飾壁に負けないクオリティを、空間全体に波及させたかったからです。大理石の質感を際立たせ、その存在を空間に調和させるためには、それに負けない質感を持ちつつ、木や金属など他のさまざまな素材と相性のいい、ニュートラルな素材であるカラーガラスが最適だと考えたのです。もちろん大学という施設の性格上、汚れへの強さ、メンテナンス性の良さも決め手になったことは言うまでもありません。

カラーガラスならではの高質感はそのままに、“映り込みを持たない”という新しい方向性を提示したマットな「マテラック」。これまでのカラーガラスとはひと味違った不思議なテイストが、複雑なコンセプトを持ったこの空間の具現化に大きく役立ったと、とても満足しています。

【使用ガラス】

マテラック』 ピュアホワイト

さとうかずお

Profile

1969年東京都生まれ。90年東京工業大学工学部附属工業高等学校専攻科建築科卒業。槇総合計画事務所勤務。
主な担当プロジェクトに、幕張メッセ北ホール、テレビ朝日本社ビルほか

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