導入事例

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安心・安全

18. ガラスが割れる時-1 衝撃

衝撃・衝突

ガラスが割れる原因はいくつかあります。 衝撃、圧力、温度差による熱割れなどなど。ここでは衝撃と安全について話しましょう。

ガラスへの衝撃

ガラスは衝撃で割れる、という認識は幼児を除いて全ての人に共有されていると思います。硬くて重いものが相応のスピードでガラスにぶつかると割れます。この衝撃力は一般的に短期的(瞬間的)かつ集中的な荷重です。ガラスの強度計算はガラスの種類や厚さごとに算定された「許容応力」内に収まるよう、想定される環境で安全な板厚や施工方法が選択されます。
しかし例えばビール瓶を板ガラスに投げつけるような場合(図1)は、その速度やガラスに当たる瓶の位置や角度など不確定な要素により定量的に計算するのは難しく、どこまでなら破壊しない、という計算は意味がないと言えます。これは台風時に強風で飛ばされる瓦などの飛来物による衝撃も同じですが、飛来物に対する安全性を確認する方法として「暴風時における飛来物衝突試験」がJIS R 3109に規定されています。

【画像】(写真1)

(図1)

人体に対する安全性の基準はあるか

人体が透明板ガラスに衝突するケースは少なからずあることです。そのような場所には安全ガラス(後述)の使用が推奨されますが、この安全ガラスを用いた場合の安全性を確認する方法がJISに規定されています。
「ショットバッグ試験」といい、重さ45kgの砂袋を振り子のようにある高さからガラス面に衝突させる試験で(図2)、砂袋を人体の質量、落下高さを衝突の速度(衝突力)と考えて、各種ガラスとその大きさなどについて試験します。
この試験ではガラスが割れるかどうかということもありますが、むしろ破壊した時の安全性を検討するための客観的な試験方法と位置付けられています。

【画像】(写真1)

(図2)

ショットバッグ試験のイメージ

実際の試験はガラスやフレームの支持方法など詳細が定められています。

安全設計指針

一方、人体に対する安全性の指針として「ガラスを用いた開口部の安全設計指針」が昭和61年に旧建設省により通達されました。現在では(一財)日本建築防災協会の「安全・安心ガラス設計施工指針」のひとつとして運用されています。この「安全設計」の詳細は省きますが、簡単に言うと、人が衝突する危険のある「部位」とそこにあるガラスの一枚の「大きさ」を規定して、その部分に使われるガラスには安全ガラスが推奨されることになります。
安全ガラスというのは「強化ガラス」または「合わせガラス」を言い、危険部位とは基本的に人の移動の機会の多い出入り口付近です。当然ながら薄いガラス、一枚の面積の大きなガラスほど破損の危険度が高くなります。
現状では「指針」であり「こうしなければならない」という法令ではありませんが、事故防止の点から建物の所有者、設計者、施工者には注意義務として配慮することが求められます。

日常にある小さなガラス破壊

日常生活でガラス破損に注意したいのは金属など硬いもの、尖っているものとガラスの接触です。
尖っているということを言い換えると、ガラス面に当たる面積が小さいということ。同じ質量と運動量でもガラス上の小さな面積に衝撃力が集中すると破損する確率は高くなります(図3)。これは強化ガラスでも同じで、車用の緊急脱出ハンマー(レスキューハンマー)はその原理を応用して緊急時に比較的小さな力でもガラスを割ることができるものです。

【画像】(写真1)

(図3)

衝撃力が小さな面積に集中すると破損の確率が高まる

もうひとつ注意したいのはガラスエッジへの衝撃です。フレームレスのガラスドアやショーケースなどガラスエッジが露出しているものは、特にエッジの角に注意する必要があります。角は面に比べ異物が接触した場合その接点面積が小さく、硬いものが当たると小さな力でも破損することがあります(写真1)。エッジが貝殻状に欠けている強化ガラスのフレームレスドアを見かけることがありますが、この傷が進行すると強化ガラスが全面破壊する可能性があります。(強化ガラスの特性は別項で詳しく述べます)
フレームレスガラスドアに限らず、欠けたガラス部分は鋭利なため怪我をしやすく、注意が必要です。

【画像】(写真1)

(写真1)

小さく欠けたガラスエッジ

(この写真はフロート板ガラスに意図的に欠けを生じさせたものです。)
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